Bote & Bock, Berlin, 1960.
このテノールホルンが、どういふ樂器であるか、我が國では色々な憶測が飛んでゐて、そこに實演の見聞による知識も加はるため、ネット上は勿論、専門のライターに至るまで、正確な記載が極めて少ないのが現状です。
しかし、事は非常に單純明快で、マーラーがB♭調で記譜したテノールホルン(Tenorhorn)は、正にその名の通りテノールホルンといふ樂器そのものを指してゐるのです。
これは、ドイツやオーストリア、東欧諸國の吹奏樂團で使はれてゐるB♭調の樂器です。演奏にはト音記号のB♭調の楽譜が使はれます。
左がドイツのアレキサンダー社製、右が同じくドイツのミラフォン社製のテノールホルン
チェコのチェルヴェニー社製テノールホルン(左)とオーストリアの吹奏樂團のテノールホルン
同じ「テナーホーン(Tenor Horn)」といふ名前の樂器が、イギリス式のブラスバンドにもあります。それはE♭調で、ピストンヴァルヴを備へてゐて、もっと細い樂器です。サクソルンのアルトと同じ樂器(モデルによる微少の差異は考慮しない)で、フランス、アメリカ、日本ではアルトホルンとも呼ばれます。
イギリス(フランス)のベッソン社製テナーホーン(マーラーの指定したTenorhornとは異なる樂器)
これら、ドイツ系のB♭調のテノールホルン(Tenorhorn)と、サクソルン系のE♭調のテナーホーン(Tenor Horn 又はアルトホルン Alto Horn)とをゴッチャにしてしまふと、大變ややこしくなりますが、素直にドイツ系のテノールホルンを指定したと考へれば、單純明快なのです。
マーラーの指定通り、テノールホルン(舊東ドイツのヴェルトクランク社製)で演奏した例
L.バーンスタイン指揮/ウィーンフィルハーモニー
映像:ユニバーサル ミュージック クラシック
使用樂器:Weltklang の Tenorhorn
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このテノールホルンよりやや太い、バリトンといふ樂器もこの地の吹奏樂團では使はれてゐて、マーラー7番もバリトンで演奏されることも多いです。また、ユーフォニアムで演奏されることもあります。
マーラーの指定通りテノールホルンで演奏した例はこちら
ドイツ式バリトンで演奏した例はこちら